ケンポナシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ケンポナシ
Hovenia dulcis
Hovenia dulcis
分類APG III
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: クロウメモドキ科 Rhamnaceae
: ケンポナシ属 Hovenia
: ケンポナシ H. dulcis
学名
Hovenia dulcis Thunb. (1781)[1]
シノニム
和名
ケンポナシ(玄圃梨)、
ヒロハケンポナシ
英名
Japanese raisin tree
品種
  • オウゴンケンポナシ H. d. f. deviata

ケンポナシ(玄圃梨、学名Hovenia dulcis)は、クロウメモドキ科ケンポナシ属落葉高木

名称[編集]

昔の日本ではテンボノナシと呼び、肥前ではケンポコナシと呼んでいたが、シーボルトは、計無保乃梨(ケンポノナシ)、別名を漢名「シグ」とした。転訛して、ケンポナシとなった[3]。別名「ヒロハケンポナシ」ともよばれる[1]。中国名は「北枳椇」[1]

分布[編集]

日本朝鮮半島中国東アジア温帯一帯に分布し、日本では北海道奥尻島本州四国九州まで分布する[4]。山地の渓流沿いの斜面に自生する[4]。植栽として、庭などに植えられる[4]。果実の見かけは枝つき干し葡萄のようなので、英語では"Japanese raisin tree"という。

特徴[編集]

落葉広葉樹高木[4]樹皮は縦に浅く裂けて剥がれる[4]葉縁がやや内巻で波打ち、鋸歯がある[4]

花期は初夏(6 - 7月)[4]。淡黄緑色の小型のが集散花序になって咲く[4]に直径7ミリメートル (mm) の果実が黒紫色に熟す[4]。同時にその根元の果柄部が同じくらいの太さにふくらんで[5]ナシ(梨)のように甘くなり食べられる[4]

被食型散布樹種でありハクビシンタヌキに食べられることで、分布範囲を拡大し種子の発芽率が上昇する[5]

利用[編集]

庭木にされる[4]。太った果柄は食用となり、ナシのような甘さと歯触りがある[4]

実は民間では二日酔いに効くともいわれる[6][7]。この効用はジヒドロミリセチンと呼ばれる化合物に由来するという研究が発表されている[7]

樹皮を煎じてのように飲むこともある。葉に含まれる配糖体 ホズルシンには甘味を感じなくさせる性質がある。ケンポナシ抽出物[8]にはアルコール臭の抑制効果があるという報告もあり[9]、ケンポナシ抽出物はチューイングガムなどに利用される[10]

ケンポナシ属[編集]

東アジア温帯に数種ある。

ケンポナシ Hovenia dulcis
ケケンポナシ Hovenia trichocarpaHovenia tomentella
本州四国にはよく似たケンポナシよりも多く生えている。これは葉裏・花序・果実に毛があることと葉の形(厚く、鋸歯が鈍い)とでケンポナシと区別されるが、同じように利用される。
シナケンポナシ Hovenia acerba

脚注[編集]

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hovenia dulcis Thunb. ケンポナシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月19日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hovenia dulcis Thunb. f. latifolia(Nakai ex Y.Kimura) H.Hara ケンポナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月19日閲覧。
  3. ^ ケンポナシ、玄圃梨、枳梖(きぐ)、Hovenia dulcis、クロウメモドキ科ケンポナシ属 イー薬草・ドット・コム
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 255.
  5. ^ a b 小林峻大、林田光祐、「特異な果実形態を持つケンポナシの種子散布と被食による発芽への影響」 『東北森林科学会誌』 2014年 19巻 2号 p.41 - 50、doi:10.18982/tjfs.19.2_41
  6. ^ 薬用植物・生薬・薬草・健康茶 玄圃梨 けんぽなし ケンポナシ 枳グ子 きぐし キグシ について やなぎ堂薬局 [リンク切れ]
  7. ^ a b Shen, Yi; Lindemeyer, A. Kerstin; Gonzalez, Claudia; Shao, Xuesi M.; Spigelman, Igor; Olsen, Richard W.; Liang, Jing (2012-01-04). “Dihydromyricetin As A Novel Anti-Alcohol Intoxication Medication”. The Journal of Neuroscience 32 (1): 390–401. doi:10.1523/JNEUROSCI.4639-11.2012. ISSN 0270-6474. PMC 3292407. PMID 22219299. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3292407/. 
  8. ^ 果実付き果柄部から抽出したもの
  9. ^ 大熊浩、滝口俊男、下川千可志 ほか、「ケンポナシ(Hovenia dulcis Thunb.)抽出物含有チューインガムによる飲酒後のアルコール臭除去効果」『日本歯科心身医学会雑誌』第9巻第2号、日本歯科心身医学会、1994年12月、213-217頁、doi:10.11268/jjpsd1986.9.2132013年7月9日閲覧 
  10. ^ 日本チューインガム協会

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]